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アインシュタイン深掘りの巻(最終回)…⑩まだ続く宿題…

12年前、アインシュタインの脳のグリア細胞に関する論文を発表したコロンボ博士は、脳を所有していると思われましたが、メールで問い合わせても、一切その事を明らかにしませんでした。なぜ、口を閉ざすのか…スタッフは現地に赴き、直接尋ねる事にします。

コロンボ博士(79歳)は、既に10年前、大学を退職していました。撮影に難色を示すコロンボ博士でしたが、改めて取材の目的を伝えると、暫くして了承してくれます。ようやくオフィスに入る事が許され、率直に尋ねてみると…暫く考え込むコロンボ博士。やがて、棚から小さな容器を取り出すと、中にはアインシュタインの脳のブロックが入っていました。

25年ほど前ハーベイに要望して送ってもらったという脳のブロック。持っていたのは頭頂葉や後頭葉など合わせて5つのブロックでした。 引退後も人知れず自宅で手元に置き続けてきたアインシュタインの脳。『天才の脳を独占していたい。』いつしかそんな思いが心を占めていったというのです。あまりにも凄かったアインシュタイン…その脳は、もはや単なる研究対象ではなくなっていたということでしょうか…。

散逸したアインシュタインの脳が元どおりになる日は来るのか。300枚の画像解析を進めることで新たな発見もありました。人間の脳が年齢とともにどのように変化するのか…5歳から80歳まで3,000人に及ぶ膨大な脳のデータをもとに明らかになってきていますが、このデータを使えばアインシュタインの全盛期の脳に迫れるのではないかと考えた教授がいます。

アインシュタインは26歳、奇跡の年と呼ばれる僅か1年の間に、特殊相対性理論をはじめ新たな論文を立て続けに発表。今回、再現された76歳時点のアインシュタインの脳…その時間が、瀧教授の手によって巻き戻されていくと…やがて、20代のアインシュタインの脳の形状が推定されていきます。

見比べると20代の脳は溝の隙間がびっしり詰まった状態になっている事が分かります。領域別に見てみると、音や言語など耳からの情報を処理する側頭葉。この一部では、あまり変化はありませんが、76歳時点でも特異性が指摘されていた前頭葉と頭頂葉。20代の頃は更に大きく発達していた可能性が浮かび上がったのです。実際の脳を集めて解析できれば内部の細胞の分布や細胞同士のネットワークが明らかになり、より詳細な成果が得られると瀧教授は指摘します。

脳の構造というのは、普通、左右に分かれていて役割分担が違っています。左右の間に大きなミゾのような谷間があるのですが、アインシュタインの脳はそのミゾが一般の人よりも浅かったということが研究の結果明らかになりました。つまり、右脳と左脳との間を結ぶ情報伝達が普通の人よりも早いことを意味しています。

また、一般的に頭が良い人というのは「脳が重い」と言われていますが、アインシュタインの脳は1250g…一般人の脳が1400gとされていますから、なんと一般人より軽かったことになります。つまり、頭の良し悪しというのは脳の重さと結びつくとは必ずしも言えない訳です。

幼い頃から独自の思考を重ねていたとされるアインシュタイン。その脳内で人類の世界観を一変させるような発見がどのようにして生まれたのか。今、最先端の科学ではそうした複雑な思考を可能にする脳の働きの解明が進んでいます。人間の脳の全容解明に挑む世界的なビッグプロジェクトを率いる…1,100人余りを対象に、どんな条件の時に脳がどう活動するか詳細に解析。

ひらめきや発想が生まれる時の脳の動きが徐々に明らかになってきました。カギとなるのは意外にも”ぼんやり”と安静にしている状態。この状態の脳は、前頭葉や頭頂葉などの特定の領域が互いに連動し強く活性化しています。普段は接点がない記憶や知識がつなぎ合わされ、新たな発想が生まれる可能性があるというのです。アインシュタインはデフォルトモードネットワークに関わる前頭葉と頭頂葉が特に発達していました。もし、実際の脳を解析できたなら、人類史に残る偉大な発見を生んだ発想の源を突き止められる可能性があるのです。

消えたアインシュタインの脳を世界各地に追い求めたNHKスタッフによる取材の7か月。脳を持つ人たちにはある変化が起き始めていました。コロンボ博士は、今回脳の科学的な価値について考え直し、返却する意思を固めました。遺伝子の解析に失敗したボイド博士もまた、後ろめたさから密かに保管してきた前頭葉のブロックを返却すると決めてくれました。ボイド博士が脳を託す先として選んだのはハーベイから脳の管理を引き継いだX医師。

死後63年を経た今回の取材で、直接所在を確認できたブロックは134か所。所有者の情報が得られたのは14か所。残る92か所は依然手がかりがつかめていません。番組の最後ではこんな事が語られていました…

『全ての脳を取り戻す事はできるのか。そして、人類の知性の謎を解き明かす事はできるのか。それが天才アインシュタインが私たちに残した最後の宿題なのかもしれない。』

・・・ここまで通してお読みいただいた方は、きっと、気付かれた事でしょう。【最後の宿題】って、つい最近解かれたばかりじゃないか?って・・・。この追跡調査、引き続き頑張って欲しいものですねぇ…。・・・ということで、全10回にもわたって延々と続いた今回のシリーズは、ようやく終わりを迎えます。長々とお付き合い下さった方々、有り難うございました!!

※パスワードの保護を解除しました。前回出題の暗号問題回答は、次のブログに掲載しています。

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