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リーダーとして望まれるもの…チャーチル⑤

チャーチルはイギリスが勝利することで戦争が始まる前の大英帝国が世界に君臨する栄光の時代に戻ることを期待していました。ところが、戦勝国の会議で主導権を握ったのはイギリスではなく、アメリカのルーズベルトとソ連のスターリンでした。

『私の左側には手足を思い切り伸ばしたロシアの大熊、右側にはアメリカの大きな象がいた。2頭に挟まれ哀れな英国の小さなロバは、ただ1人正しい道を知っていた。』

イギリスの領土要求は不調に終わったばかりかインドなど、かつての大英帝国の植民地も独立の道を歩み始めていきます。チャーチルが目指した帝国の栄光は幻となってしまったのです。更に選挙でもチャーチルの保守党は大敗してしまいます。首相の座を追われた時、チャーチルは既に70歳になっていました。

引退を考えてもおかしくない年齢でしたがチャーチルはなおも野党の党首として活動を続けていきます。政界を引退したら2度と戻ってくることができないと分かっていたのです。そして、彼は、まだ自分には何かを変える力があると考えていました。東西冷戦の中でイギリスの影響力を保つために、まだ自分にやれることがあるとチャーチルは信じていたのです。

第2次大戦後の世界はソ連の社会主義陣営とアメリカ中心の資本主義陣営の対立構造でした。チャーチルは東西の分断を「鉄のカーテン」と表現し、その西側にいる我々は団結するべきだと呼びかけました。現在のEU構想も、いち早く世界に唱えたのはチャーチルだと言われています。

活動を続けること6年、ようやくチャーチルに幸運が訪れます。政権与党への不満が爆発し、野党の保守党が再び選挙で勝利したのです。チャーチルは76歳で首相に返り咲きました。しかし、議会では「老害」「引退すべき」という声も少なくありませんでした。新聞記者に「いつ引退するのか?」と聞かれたチャーチルはこう答えました。

『私の健康が本当に衰えて、大英帝国が本当に元気を取り戻したらね。』と・・・。

そんな中 思いもよらない出来事が起こりました。自らの著書「第2次世界大戦」が戦争当事者の貴重な証言として高く評価されノーベル文学賞を受賞したのです。チャーチルは序文にこう書いています。

『過去に深い考慮を払うことがきたるべき日の手引きとなり、未来の恐るべき光景を抑制できることを私は心から願っている。』と。

ノーベル賞の受賞でまだまだ元気そうに見えたチャーチルでしたが衰えは隠せませんでした。耳がすっかり遠くなり閣議の答弁もしばしば失敗しました。1955年 80歳になったチャーチルは周りから引退を迫られ、ついに受け入れることになります。

首相官邸を去る前日、思わぬ光栄に浴します。妻クレメンティーンと共にエリザベス女王から直々にねぎらいを受けたのです。それから丁度10年が過ぎた1965年、チャーチルは90歳で激動の生涯にピリオドを打ちました。

『いい旅だった。旅に出た価値はあった。…1度だけなら。』

くしくも父親が死んだ日と同じ日だったそうです。こんな奇跡もあるんですね。国葬にはチャーチルを慕う30万の国民が参列したそうです。そんなチャーチルだったので映画の登場人物としても何度か取り上げられています。

最近とは言えないかもしれませんが、2017年に作られ、昨年話題になった映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』という作品、是非観たいと思っています。主演のゲイリー・オールドマンは、映画「レオン」で見事に悪役を演じきった役者さんですが、この映画でも主演男優賞を軒並み受賞していました。まだ見ていないのですが、お薦めの映画です。

“リーダーとして望まれるもの”について、延々書いてきましたが、まとめは次回にするとして、最後はチャーチルの名言集から、いくつかご紹介したいと思います。
◆誠実でなければ、人を動かすことはできない。人を感動させるには自分が心の底から感動しなければならない。自分が涙を流さなければ人の涙を誘うことはできない。自分が信じなければ、人を信じさせることはできない
◆成功があがりでもなければ、失敗が終わりでもない。肝心なのは、続ける勇気である
◆私は血と苦労、涙と汗以外に捧げるべきものを持たない
◆正直であることは立派なこと。しかし正しくあることも大事だ
◆孤独な木は、仮に育つとすれば丈夫に育つ
◆20才までに自由主義者でなければ情熱が足りない40才までに保守主義者でなければ知能が足らない
◆力や知性ではなく、地道な努力こそが能力を解き放つ鍵である
◆敵がいる?良いことだ。それは、人生の中で何かのために立ち上がったことがあるという証だ
◆全力を尽くすだけでは十分ではない。時には必要なことをやらなければ
◆日々正直に行動することが、成功に達する最も確実な道だ
◆勇気とは起立して声に出すことである。勇気とはまた着席して耳を傾けることでもある
◆目前にせまった困難や大問題にまともにぶつかること。そうすればその困難や問題は、思っていたよりずっと小さいことがわかる。しかし、そこで逃げると、困難は2倍の大きさになってあとで襲ってくる
◆大切なことは、力のない人の言葉が認められることである

(つづく)

・・・で、前回ブログの暗号問題ですが、お馴染み【ポリュビオアス暗号】から、2315313134は、hello→"こんにちは"であることが確認できるので、12341142の正解は、boar(→いのしし)という事になります。ポリュビオアス暗号の換字表は、以前紹介しているので省略させて頂きますね。(ネットで簡単に調べられます。)ではでは。

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