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家族の在り方を問われた「万引き家族」

先日、是枝裕和監督作品の「万引き家族」という映画を観ました。TSUTAYAのレンタルでも借りていく人が多いようで、映画にそれほど興味のない息子ですら知っていたので、それなりの作品ではあると思います。

昨年2018年6月8日公開の日本映画で、第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドールを獲得したことで、あちらこちらのマスコミで取り上げられていましたよね。日本人監督作品としては、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶりの快挙でした。

そんな作品ですから、勿論日本国内でも沢山の受賞をしており、第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞ほか12部門、第92回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画ベスト・テン第1位、主演女優賞、読者選出 日本映画監督賞、読者選出 日本映画ベスト・テン第1位と名実ともに認められた作品となりました。

映画は、親の死亡届を出さずに年金を不正に貰い続けていたある家族の実際にあった事件をもとに、是枝監督が「家族」や「社会」について構想10年近くをかけて考え、作り上げた[ということで、様々な視点からの「愛情」が描写されていました。

脚本段階では子どもに「お父さん」「お母さん」と呼んで欲しいと願う主人公の想いが重点的に描かれており、撮影中につけられていた映画のタイトルは『万引き家族』ではなく『声に出して呼んで』だったという話です。この辺は、実際に映画を観て頂かないと、なかなか分からないですよね。

さて、肝心の映画の中身ですが・・・半分ネタバレ・・・

東京の下町に暮らす日雇い労働者の「お父さん」とクリーニング工場で働く「お母さん」は、夫妻の「息子」の少年、女子高生見学店?で働く「お母さん」の「妹」、そして樹木希林演じる「お父さん」の母・「老婆」が家族として同居していました。

家族は夫妻の給料に加え、「老婆」の年金と、「お父さん」「息子」が親子で手がける万引きで生計を立てていました。しかし、「老婆」は表向きは独居老人ということになっており、同居人の存在自体は秘密でした。つまり、本当の家族ではなかったということですかね…。それでも、5人は社会の底辺で暮らしながらも、笑顔の絶えない生活を送っていたのです。

ある冬の日、「お父さん」は近所の団地の1階にあるバルコニー状の外廊下で、ひとりの幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねて連れて帰ります。夕食後、「ゆり」と名乗るその少女を家へ帰しに行った「お父さん」と「お母さん」は、家の中から子どもをめぐる激しいやりとりを聞いてしまいます。

結局「ゆり」は再度夫妻の家に戻されますが、体中の傷跡など「ゆり」に児童虐待の疑いがあることを見つけると「お母さん」は彼女と同居を続けることを決め、「誘拐ではないか」という「妹」に対して「脅迫も身代金の要求もしていないから、これは誘拐ではなく保護だ」と主張し、「ゆり」は「幼子」として夫妻の6人目の家族となっていきます。

新しく家族となった「幼子」にも、「お父さん」が万引きの仕方を教えていきます。家族は3人の万引き以外にも、「老婆」はパチンコ店で他の客のドル箱をネコババし、「お母さん」は、クリーニング店で衣服のポケットから見つけたアクセサリーなどをこっそり持ち帰るなど、「妹」を除く全員がなんらかの不正や犯罪に手を染めていました。

夏を迎える頃、「息子」は、いつもの駄菓子屋で「幼子」に万引きをさせたところ、気付いていないと思っていた年老いた店主に呼び止められ、お菓子を与えられ「妹にはさせるなよ」という言葉をかけられました。2人の万引きには以前から気付いていましたが、子供だったので、見て見ぬふりをしていたんだという事を「息子」は感じ取っていきます。

「お父さん」のケガによる休職、「お母さん」の不景気による解雇、「老婆」の死、駄菓子屋の店主の死、「息子」の正義感への目覚め・・・そうした歯車の狂いが家族を崩壊へと引き込んでいきます。

もう、このまま全部話してしまいたいところですが、個々の保有する愛、守ろうとする愛、わがままな愛や、形式的な愛など、様々な愛情表現に関しては、繊細に描かれているので是非ご覧頂きたいと思います。ラストシーンでは虐待に苦しむ「幼子」の映像が流されていきますが、弱者を守る社会の仕組みについて、痛切に訴えられている気がしました。

すっきり爽やかに観終われる映画ではありませんが、心に訴えてくるもの、必ずあるのではないかと思います。同映画の公式サイトは、こちらです。
https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
機会があれば、是非ご覧ください。

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