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見えないものが見えるようになる映画『光』

先日、河瀬直美が監督と脚本を務められた映画『光』を観ました。大森立嗣監督の三浦しおん原作映画『光』とは別物ですので、そこは勘違いされませんように…。

この映画は『あん』に続いて永瀬正敏さん主演の作品で、視力を徐々に失っていく男性写真家、中森と、視覚障害者用に映画の音声ガイドを制作する若い女性との交流を描いた映画です。第70回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを競うメインコンペティションに選出され、河瀬監督にとって日本人監督最多の8度目の正式出品、永瀬さんにとって日本人俳優初の3年連続の出演作出品となりました。エキュメニカル審査員賞を受賞し、日本人監督作品では2000年の『EUREKA』以来2度目となった作品です。

映画の中で音声ガイドを付けられていく…もう一つの映画には藤達也さんが出られており、途中、音声ガイドの原稿を作っている女性からその映画の監督役としてもインタビューを受けています。インタビューでは、「映画には希望のある結末が欲しい」と言われ、「あなたの希望になれたら良いね」と答えて去っていくシーンがありましたが、この映画では「映画の見方」についても触れられていた気がします。

【作品が表しているものは何か】【登場人物の動作や情景を、言葉で伝える音声ガイドのあり方】【スクリーンの世界観は見るのではなくて、入ること】・・・映画の奥深さ、作り手の意図するものは・・・見えるものだけではない世界…味わって欲しいですねぇ。

今回、この映画を観て考えさせられたこと・・・
【カメラマンにとって、視力を失うこととは・・・】
【音楽家にとって、聴力を失うこととは・・・】
【スポーツマンにとって、スポーツが出来ない身体になることとは・・・】
【歌い手が、声を失うこととは・・・】

間もなく視力を完全に失うであろう中森は、ボロボロに傷ついた状態で、声をかけてくれた女性の顔形を両手で確認し、1枚の写真を撮っていきます。

中森自身が、自分の心臓とまで語っていた、大切なカメラを捨てるとき…
若い女性は「何で!!」と叫びます・・・

映画の中のもう一つの映画には見事な音声ガイドがつけられ無事上映・・・
やがて、若い女性のもとに中森から手紙が送られてきます。
「僕の最後の写真です」と書き添えられたその封筒には、ピンボケしてはいたものの、しっかりと真正面から撮影された見事な写真が入っていました。

映画の中で、殆ど目が見えなくなった中森が言った言葉・・・
『見えないのに、見たくないものが見えてしまうことがある』
深く印象に残った一言でした。

河瀬直美監督の映画「あん」は、老人ホームに入っている《あん》作りの上手な女性と、売れないどら焼き屋のお話で、これまた心に沁みるような良い映画でしたが、今回の映画もまた、考えさせられたことの多かった良い作品でした。2作品とも機会を作って、是非観て頂きたい映画です。

さてさて、前回ブログのパスワード問題ですが、シーザーの換字表(カエサルの換字表)を使っています。今回は、アルファベットの順番を5つ後ろにずらした形で利用していました。
従ってmfyはhatとなります。

 

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