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資本主義は、人口増加が支えた…【日本人の勝算】

タイトルからすれば、人口減少しているこれからはどうなるのか?…そんな事を考えてしまいませんか? 2019年の年明けから書店に並び始めた1冊の本。【日本人の勝算】という本を御存知でしょうか?筆者のデービッド・アトキンソン氏は、この本を書くにあたって、こんなコメントを出されています。

『日本に拠点を移してから30年、さまざまな出来事を目の当たりにしてきました。経済の低迷、それにともなう子どもの貧困、地方の疲弊、文化の衰退――見るに耐えなかったというのが、正直な気持ちです。厚かましいと言われても、大好きな日本を何とかしたい。これが私の偽らざる本心で、本書に込めた願いです。世界的に見て、日本人はきわめて優秀です。すべての日本人が「日本人の勝算」に気づき、行動を開始することを願って止みません。』

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏は、退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきました。そして、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた物が、今回出版に至った『日本人の勝算』という訳です。

人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか?アトキンソン氏の分析を簡単にご紹介させて頂くとこんな感じです・・・

実は人口増加に支えられてきた資本主義…。地価の高騰・インフレ・GDP(国内総生産)の成長する主因も…全て人口増加によるものだった…。戦後日本が経済的に他の国をしのぐ勢いで急激に成長したのも、その主たる要因は人口動態で説明ができると言います。日本ではアメリカを除く他の先進国を大きく上回る勢いで人口が激増しました。これが日本の急成長の主要因。

そもそも資本主義は、人口が増加した時代にできた制度。実は社会の常識の多くが、人口動態で説明可能なことに気がついたのは、ごく最近のことで、海外でもごく最近になって、人口増加と経済成長の関係を研究する学者が増えているそうですが、論文はまだ非常に少なく、たいへん注目されている分野なんだとか。この論理からすれば、人口が減少するとどうなってしまうのか…何となく想像はできますよね・・・。つまり、日本は既に人口減少の時代に突入しており、対処を急がなくてはならないと言うのです。

例えば松下幸之助氏は、経営の神様として崇め奉られていますが、「水道の水のように低価格で良質なものを大量供給することにより、物価を低廉にし、広く消費者の手に容易に行き渡るようにしよう」という、「水道哲学」として知られる思想…「良いものを、安く、たくさん」という考え方は、人口増加に支えられた過去の戦略であって、消費者が減り、パイが縮小している現在では、競合が同じ戦略で戦いを挑んでくれば、共倒れになってしまう事になります。

『日本のビッグマックは、なぜ途上国より安いのか』そんな事を題材にこんな事も取り上げています。国際比較が容易なマクドナルドを基に、イギリスの著名な政治経済紙「The Economist」が計算している「ビッグマック指数」は、各国のマクドナルドのビッグマックの価格を比較することによって、適正な為替レートを算出しようとしている指数になります。ビッグマックは大きさ、材料、調理法などが、原則世界中で統一されていますが、価格は国によってまちまちなので、比較しやすいという訳です。

そこで注目したいのが日本。なんと、日本のビッグマックの価格はタイやギリシャよりも安く、スイスの半分ぐらいで、どの先進国よりも極端に安いとのこと。日本の不動産価格は安くありません。材料も電気代やガス代もしかりです。利益は全体の付加価値のごく一部にしかならないので、利益水準の違いでは、日本のビッグマックの価格が安い理由の説明はできません。残るのは、付加価値の最大の構成要素である「人件費」。

実際、購買力を調整したビッグマックの価格と最も相関関係が強い要素が何かを分析すると、最低賃金だという答えが導き出されるそうです。結局、日本では最低賃金が極めて安く、安い賃金で人が雇えるので、ビッグマックを安い価格でも提供できているというのです。

日本は1人当たりGDPに対する最低賃金の割合がヨーロッパに比べて異常に低く、アメリカに近いそうですが、アメリカでは最低賃金で働いている人の割合は日本に比べて非常に少ないらしいのです。最低賃金はイギリスは1999年、ドイツは2015年から導入し、徐々に引き上げています。日本人の生産性はイギリス人とほぼ同じですが、最低賃金はイギリスの7割しかもらえていません。所得が低く抑えられているので、消費に回らず、間接的に消費税へも悪影響を及ぼしています。ワーキングプアも増えます。

人口がコンスタントに増えていた時代と違い、人口減少・高齢化が進む時代に、最低賃金が安いことをベースにして、「いいものを、安く、たくさん」という経営戦略をとることは無責任極まりない行為なんだと訴えています。人材の質の高さが自慢されるというのに、経営者はその人材に払うべき給料を払わないというのは、おかしな話なのです。世界第4位と極めて高い評価を受けている日本の貴重な人的資源を最大限有効にすることが大切なんだという訳です。

【日本人の勝算】は、こんな構成になっています。
第1章 人口減少を直視せよ――今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ――「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ――「大人の学び」は制度で増やせる
気になる方は、是非、お読みになられては如何でしょうか??

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